―――――9年前―――――
ビル最上階での銃撃戦の渦中に、ツヨシと呼ばれている男『窪田 駿』はいた。
敵は7人であるのに対し、窪田側が13人、最上階まで追い詰めたという状況だった。
もう逃げ場がないと悟ったグループのリーダーが、身につけていた爆弾に点火し、自爆した。
その場にいた者は皆、爆風によって吹き飛ばされ、窪田も壁に激しく打ち付けられ、後頭部を強打し、気を失った。
「おい、大丈夫か?しっかりしろ!」
しきりに呼びかける男の声に、窪田は意識を取り戻し、薄っすら目を開けたが、後頭部を襲う激しい痛みに顔をしかめ、また目を固く閉じた。
痛みが落ち着き、再びゆっくり窪田が目を開けると、窪田の目にぼんやりと人影が映った。
その人影はゆらゆらしながら次第に輪郭をあらわにした。
凛々しく逞しい救急救命士が窪田の傍らに立っており、身を屈めるようにして、窪田の顔を心配そうに覗き込んでいた。
窪田は痛む後頭部を右手で押さえながら、うつむきがちに上体を起こした。
「立てるか?」
そう言って、どう見ても成人したばかりであろう若い救命士は、窪田の前に大きな右手を差し出した。



