追憶のマリア

 『れん』は、そんなツヨシの言葉を鼻で笑った。


「俺はオマエのこと好きだぜ。むしろ愛してる。俺は美しいものが好きなんだ。お前はほんとに美しい…」


 れんはそう言うと、座ったまま身を乗り出し、ツヨシの頬を、ピタッピタッと2回指先で触れた。


 ツヨシはれんを冷ややかに一瞥した。


 れんはフッと不敵にほくそ笑み、立ち上がって玄関に向かったが、2・3歩で立ち止まり、


「それとあの女…」


 と言ってツヨシの方を振り返った。


「早いとこ始末しろよ。」


 そう言い残してアパートを出て行った。


 ツヨシは机の上に無造作に置いてあったタバコを手に取り、縦に軽く振って2・3本袋から飛び出させ、そのうちの1本をくわえて抜き出した。


 残りのタバコは机の上に乱暴に放って戻し、胸ポケットからジッポを取り出して火をつけた。


 そして、何事も無かったかのように、再びテレビのワイドショーに見入った。