あたしはイラついている所為か、そっちを睨む。

靴箱に座り込んでいたのは、確かに『昨日の』体育館の一階に屯していた男子だった。

日光を浴びるその髪は、真っ黒ではなくて茶色かった髪を無理矢理、黒に染めた感じだった。

「おはようございます。」

挨拶をする。

「おはよーございます。」

挨拶が返ってきた。

「朝早いね、蝶々さんは。」

“蝶々”

あたしが蝶々の総長だって事は、この学校の殆どが知っている。

「あたし、二ノ宮那瑠って名前がちゃんとあるんだけど。」

「ナルちゃん、か。僕、タキね。」

「タキ?」

聞くと、タキは立ち上がり王子のようなスマイルで頷いた。

「華厳の滝の『タキ』」