雨は嫌いじゃない。

傘が好きだったから。

ライトブルーの傘をさして、雨の中を歩くのが好きだった。

「…ったく。」

急に隣から聞こえてきた声に、私に言ったのかと錯覚する。

でも良壱は、新しく買った携帯の向こうに文句を言ってるらしい。

「…大変そう。」

「忙しくてありゃしねぇよ。」

舌打ちまで込めて言ってくれた。

外は雨が降ってる。

今は教室の窓側の席を陣取っていた。

そして、今日も夏弥はいない。

また出席日数が足りなくて、卒業出来なくても慰めてやらない。

…あたしの少しのプライドだった。