王子は優しくない。

良壱は、あたしを見て溜め息を吐いた。

明らかにホッとしたよりも、呆れて何も言えませんの溜め息。

「…遅い。」

あたしは悪態をつく。

こっちは君が来るまで、人質だったんだからね?

「悪い。理科室の場所、知らなかった。」

どっかの誰かさんと同じだし。

良壱は、あたしに近づく。

タキはさっきから、一言も喋らない。

「じゃ、こいつは貰ってくから。」

あたしの腕をとった良壱は、そう言い、もう話す事はないみたいだった。

「自分からはぶつからない。」

「あ?」

タキの呟きに、威嚇するように低い声を出す。