『姫百合、嘘ではございませんよ?秀介様と同じくらいの頭脳ですからねっ』
『違うだろ!!!!お前、高3の数学は出来ないくせに。俺と同じにしないでよ!!』
『秀介様とて、この前の中3の実力テストで一問、間違えましたでしょう!!』
『あれは仕方ないんだよ!!軽い計算ミスで……』
『“計算ミス”をしていては、“完璧”とは言いませんよ!!』
『うるさいな!!真優だって、中2の時……!!』
延々と続く、私とは次元の違う言い争いに苦笑いを浮かべる。
高3の数学が出来ない?
……二人共、中3なのに?
中3の実力テスト、一問だけ間違えた?
……い、一問っ?!
本当に意味分からない。
再びため息をつくと、拓が私の肩を抱き寄せた。
そして耳元で囁く。
『二人を置いて、早速勉強しようか』
拓の吐息がかかって、びくっとする。
こんなことで顔を赤らめる。
勉強……出来るのかな?
そう思いながらも、コクコクと頷いて、部屋の扉へ向かう。
『あら?』
『どうした?さくら』
気付けば、頼稜さんが居ない。
あの人、風のように速く仕事するからな……
知らないうちに出ていってしまったのかしら?
『なんでもない』
別に気にも留めずに、部屋を後にした。
未だ言い争う二人を置いて。

