『た、拓……』
消え入りそうな声。
貴方の耳に届いたかしら?
私と同じ、露草色を纏う。
同じ、不安を感じている。
耳元に拓の口元があって、吐息がかかる。
その熱に、のぼせそうになる。
拓が、私の長い黒髪を掻き上げるから、直に吐息がかかる。
もう、たまらなくなる。
その腕をほどいて、向き合おうと思ったのに、うまくいかない。
拓が、私を離さない。
逃がさない、と。
そして、耳元で優しく囁く。
『どこにも行くな、さくら』
はっとする。
さくら、その呼び名で。
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