1968年某月

俺の眼下にある街並は、薄暗い闇に染まり始めていた。

ピーンと張り詰めた空気の中、無音の世界が広がっている。

ぎっしりと並ぶ家々に、所々灯りがつき、道路にはミニカーのように小さな車が、疎らに走っている。

遠くの山脈も、緑の体を 藍染の寝具にすっぽり潜り込ませている。

昼間は、子供達の声を響かせていた山の麓の学校も、今は静寂の中にある。

空には煌めく星も、月明かりもない。ただ、外灯が、アスファルトを点々と照らしている。

無防備で、平和な街を見渡した俺は フーッと、息を吐いた。


ビイ――!!
合図が鳴った!

=失敗は許されない!=

俺は、太くて重い尻尾を 片足で蹴りあげて 背中からおもいっきり不様に、闇の街に倒れ込んだ。

ドッシ――ン!!

グシャ!! バリバリ――!!


衝撃で一気にホコリが舞い上がり、辺り一面を覆いつくす。

………………

俺の体と、その下敷きになって壊れた街に、ホコリが 雪の様にゆっくりと降り積もる…。

 レッドキングが破壊した街を ヒーローが踏み付けて――
  シュワッチ!!
と、街の残骸から、M78星雲へ飛び立った。


 OKランプ点灯

壊れた街に、お疲れ様の声が飛びかう。
俺の背中の下で、街が泣いていた。