私、海が見たい


喫茶店。

「どうして、今頃、ここにいんの?」


「お正月に帰れなかったから、
 十日くらい前に帰ってきたの」


「そんなに長く?」


「放って置いて大丈夫なのかい、
 ダンナは」


「ええ、なんとかやってると思うわ」


「ハハハ、そんな無責任な」


そう言って、笑いながら恵子を見ると、
彼女は目を伏せて黙っていた。

少しの沈黙の後、恵子が顔を上げる。

「バスケット、まだしてるの?」


「ああ、後輩たちを集めてなっ、
 社会人のクラブチームを造って
 週2回、練習してんねん」


恵子は微笑んで中村を見る。

「そうよね。やってない訳無いわよね。
 あなた、バスケット命、
 だったんですものね」


「いや、もう必死のバスケットは止めたんや
 今は、楽しいバスケットをしてるわ。

 それと今は、小学生に
 バスケットを教えてるんや。
 担当は5年生の女の子なんやけど、
 皆、出来へんくせに
 口だけはたつんやから。
 せやから、忍耐力だけはついたわ。
 けど、上手くなるのんが
 目に見えて分かるから、面白いわ。

 みんな、かわいいんやで」


恵子の笑顔が消えて、
前を向いてポツリと言う。

「そう、いいわね」