下を向いたまま、ようやく、
重い口を開く恵子。
しかし、その口調に中村は、
心からの喜びは感じられなかった。
「私も、俊明君のこと………、好きです。
結婚したいとも………、思っています」
「それじゃあこれで、問題解決じゃない」
「そうだな。まあ、彼はまだ学生だから、
すぐにどうこうとは
出来ないかもしれないけど、
その方向に向かって話を
進めてもいいんじゃないかな」
「そうですね。二人の気持ちがわかって、
私も安心しました」
「私達も、そのつもりでいますからね。
いいわね、恵子」
恵子は、下を向いたまま、ゆっくりうなずく。
「中村さん、あなたのご両親には………」
「私が帰って話します」
「そうですか、じゃあ、お願いします」
「では、後のことは
二人で、よく話し合ってください」
孝子、兄、姉、義兄は、
二人を残して、部屋から出て行った。

