私、海が見たい


義兄が、


「結婚するにはやはり、
 経済的基盤が必要だと思うんだが
 君は将来どうしたいと
 思っているんだね?」


恵子の姉が、


「そうよね。それは、大切だわ」


「家が設計の仕事をしてますから、
 私も、いずれはこちらに帰ってきて、
 設計事務所をやりたいと思います」


「そうだね。君の家は、結構評判だし、
 手広くやっているみたいだからね」


恵子の兄が、中村を擁護する意見を言うと、
姉の満子が、


「だったら、なにも問題はないじゃないの。
 あとは、恵子の気持ちだけよね。
 恵子。
 あなたはどう、思っているの?」


恵子の姉が尋ねるが、
やはり恵子は下を向いてじっとしている。

母の孝子が、恵子の煮え切らない態度に、


「恵子。なぜ、黙ってるの?はっきり、
 自分の意見を言いなさい」


やはり恵子は下を向いてじっとしている。


「なにをしてるの。あなたのために、
 わざわざ中村さんに
 来てもらったんですからね。
 あなたがはっきりしなくちゃ、
 なんにもならないでしょ」


姉の満子も、苛立ったように、


「そうよ。ちゃんと言いなさい」