私、海が見たい


    ~~~~ 別れ ~~~~

 --- 28年前、初夏。神戸 ---

中村は留年して、5年生になっていた。

大学の体育館、アリーナ。

ベンチの声・審判の笛が響き渡る。

コートでは、バスケットボールの試合。


中村はベンチから大声で応援している。

背番号は、16になっていた。


試合終了の笛が成る。

中村のチームの勝ち。

終了の挨拶。

中村は、ベンチから立ち上り、礼をする。

そして、片手でガッツ・ポーズ。


「よっし」



大学の体育館、入り口。

横に[京阪神大学定期戦]の立看板。

ジャージに着替えた中村が、
チームメイトの後輩に、


「俺、ちょっと用事があるから、
 次の試合抜けさせてもらうわ」


「えっ、でも……」


「俺がいなくても、大丈夫やろっ?
 コーチにも、うまいこと言っといてくれや
 頼む。なっ」


何か言いたそうな後輩を残して、
中村は手を上げ、体育館を走り出た。