私、海が見たい


 ----- 29年前、冬 -----


京都のアパートの一室。

暗い中、裸の中村が壁を背に膝を抱えて、
うずくまっている。

横の下着姿の恵子が、中村の肩に手をかけ、

「いいじゃないの。次はうまくできるわよ」


「うん………」


力なく、項垂れる中村。

恵子は横から、中村の首に両手を回し、
寄り添う。




静かな時が、流れてゆく。