-- 現在。車内の、綾と中村 ---
中村と綾の乗った車は、また海から離れて、
郊外を走っている。
今は海の代わりに、田んぼが広がっていた。
「俺から告白したんだけどね。
すぐには"うん"と
言ってくれなかったんだ。
だけど、なんとなく付き合いが
始まったんだよなぁ」
「ふーん」
「おじさんは、大学でバスケットボールを
していたんでしょ?」
「ああ、バスケットね。
うん、結構、本気でやっていたかな。
まあまあ強かったんだぜ」
バスケットのことを聞かれて、
うれしそうに話す中村。
「万年二部でね、
一部に上るのがみんなの夢だったんだ。
毎年、チャンスはあったんだけど、
なかなかうまく行かなくてね。
俺が4年生の時……」
そう言って、遠くを見つめる、中村。

