「おじさん、
 お母さんにメール送ったでしょう」


「ああ。あのメールね。見たの?
 同窓会名簿にアドレスが載ってたから、
 送ってみたんだけど、
 ちょっと、感傷的になりすぎたかなと、
 反省してるんだ」


やはりこいつだったのかと、睨む綾。

中村は、照れくさそうに、頭を掻いている。

それを見て綾は、少し優位に立てる気がした


「なんで、あんなメール、送ったのよ」


「あんなメールって?」


「あのメールのおかげで、
 お母さんはね……」



綾は、暗い中、
パソコンの前で泣いている母の後姿を、
忘れる事が出来なかった。


「えっ、恵ちゃん、どうかしたのかい?」


「いえ、そういうことじゃなくて」


声が小さくなり、下を向き独り言のように、

「あんなこと書くなんて…………」


「でも、君のお母さん、
 なんとも思ってないはずだよ。

 俺の事なんか、もうとっくの昔に
 切り捨ててるはずだからね」


綾が顔を上げると、中村は、
不思議そうな顔で、真直ぐ綾の目を見ていた


「だって、君達の生まれる、
 ずっと前の話なんだぜ。
 まあ、昔の想い出を
 ちょっと書いてみただけなんだけどね」


その言葉に、中村に悪気は無かったんだと
綾は思った。


「そういや、君のお母さんとも、
 もう長いこと会っていないなあ。
 この前の同窓会って、何年前…………」