***** 土曜日 *****

次の日の昼。

綾は中村設計事務所の
入り口の前に立っていた。

軽くうなづき、綾が扉を開けて入って行く。

事務机の前で雑誌を見ていた男が、
目を上げた。


「あのう、すみません。俊明さんって方は」


見渡すと、中には一人しかいなかった。


「ああ、俺だけど」


これがメールの主かと、まっすぐ見据える綾


「私、高島恵子の娘で、綾と言います」


「えっ。ああ、あの、恵ちゃんの。
 ふーん。
 そういえば、なんか似てるかな?

 まっ、そんなところじゃなんだから、
 こちらにどうぞ」