私、海が見たい


コンビニの前で、バッグから携帯を取り出し
久美子は、電話をかけた。

一回の呼び出し音で恵子が出る。


「はい、高島です」


「もしもし、恵ちゃん。
 私……。久美子だけど」


「あっ、久美ちゃん。久しぶり。元気?」


電話から聞こえてくる声には、元気が無い。

久美子は元気な声。

「久しぶりー。元気よー。
 でねっ、綾ちゃんのことなんだけど」


「えっ。綾って?いるの?
 綾がそこにいるの?」


「ええ、そうなの。今、私の家にいるのよ」


「あー、よかった。
 ちょっと、綾に代わってくれる?」


「いえ、私今、外から電話してるのよ」


「わかったわ。
 じゃあ、明日そちらへ行くから」


「ちょっと、ちょっと待ってよ。
 綾ちゃんね、
 “三日だけ、お母さんに知らせるの待って”
 って言ってるのよ」


「えっ。でも…………」


「いいじゃないの。もう子供じゃないんだし
 私のところに居るってわかったんだから」


「明日から、学校も休みでしょう」


「そうだけど…………」


「お願い。ねっ。
 あなたには連絡しないって、
 約束してるのよ。
 だから三日だけ、三日だけ、
 綾ちゃんの好きにさせてあげて。ねっ」


「でもー…………」