私、海が見たい


台所から、久美子が声をかける。

「ところで、あなた、
 今日どこに泊まるの?」


「いえ、まだ…………」


「あら、そうなの。よかったわ。
 じゃあ、ここに泊まりなさいよ。
 恵ちゃんも、帰ってきたら、
 ここに泊まるんだから、ねっ」



久美子がお茶を持ってやってくる。

「すみません」


「あら、いいのよ。
 遠慮なんかいらないんだから。
 そのかわり、三日間ずっと、
 ここに帰ってきなさいよ。
 これは、約束だからね」


「はい」


「じゃぁ、私ちょっとコンビニで
 歯ブラシなんか買ってくるから、
 楽にしててね」


「あなた食事は?」


「いえ」


「そう。じゃあ、何か
 食べる物も買ってくるわ」


「すみません」


「いいのよ。自分のうちだと思って、
 もっと楽にしてていいのよ」


そう言いながら、バッグを取り、
久美子は部屋を出て行った。