久美子が、リビングに入ってくる。 「さあ、入って、はいって」 「はい」 相変わらずうつむいたまま、 ゆっくり部屋に入る綾。 「ここはね、私一人だから、 何の気兼ねもいらないのよ。 そこにでもかけて」 屈託の無い声で、綾を促す。 「はい」 ソファの端に浅く腰をおろす綾。 久美子は、サイドボードの上にバッグを置き 台所へ行きながら、 「今、お茶入れてあげるからねっ。 あっ、それとも コーヒーかジュースの方がいい?」 「いえ、お茶で……」 綾は、下を向いたまま、小さく答えた。