展望台に立つ、二人。

「ほら、ここから見る海も、きれいだろう」


「わあ、ホント」


綾は展望台の手すりまで走って行き、
食い入るように海を見る。

その後姿を見ていた中村は、
その横に歩いて行き、
中村も手摺に手をつき、海を見ながら、

「君はお母さんが、
 カナダへ行った話を聞いていないかい?」


綾は楽しそうに、海を見ている。

前を向いたまま、

「いいえ……。いつの話?

 あっ、でも、写真が…………」


綾は、以前見た、
姉のアルバムを、思い出していた。



  開かれたアルバムの中に、
  カナダでの笑顔の恵子と亜季の写真。
   (22年前の写真)



「あの後、自分を見つめ直すために、
 君の姉さんと、しばらくカナダで
 生活していたらしいんだ。

 外国では、
 障害への偏見もあまりないしね。

 そこで、姉さんのことや、
 将来のことなど、いろいろ、
 悩んだり、考えたりしたんだろうな。

 家にカナダから手紙が来てね」 


遠くを見つめる、中村。