亜季を見ていた恵子が真剣な顔で、
中村に向きなおって、

「私ね……、
 あの人と、一度距離をおいて、
 色々話し合ったの。
 それでね………………」


言葉を選んでいるのか、黙り込む恵子。

「もう……、結果だけ、言うわね」


恵子は目を下に下ろす。

「私…………、
 やはりあなたとは、
 一緒になれないわ」


中村は息を飲む。

「私も、いろいろ考えたの。
 母や兄とも、何度も相談したりして。

 それで、私…………、
 あの人と暮らしてゆくことにしたの」


「でも、それは、自分を殺して
 生きて行くことだと言うたやないか。
 それでもええのんか?」


恵子は、下を向いたまま、

「いいの……。この子にとっては、
 そのほうがいいんじゃないか
 って思うの。

 亜季は、私の大切な子供なの。
 だから、私の事はいいの。

 私、この子のためだったら、
 何でもするって言ったでしょ」


「いや、しかし…………」