私、海が見たい


孝子は、頭を上げると、恵子の方を向いて、
目頭を押さえながら、

「よかったわね、恵子、本当に……
 これで私も安心できるわ」


「うん。
 私も、俊明君が承知してくれるとは
 思わなかったから、うれしいわ」


「えーっ、なんでやん。俺のこと、
 どんな人間と思ってたんや?」


「あら、いい人よ」


三人は、顔を見合わせて、笑った。

「中村さん、本当に……、
 本当に、ありがとうございました」


恵子のお母さんは、もう一度、
深々とおじぎをした。

「いえ、そんな………。
 俺は、ただ……」


孝子は、頭を上げると、

「では、後のことは二人で、
 よく話し合ってください」


恵子のお母さんが出て行く。

襖の閉まる音。

「もう寝てるけど、子供、見る?」


「うん」


二人立ち上がって、隣の部屋へ行った。