練習が終ると、
あたりはもう薄暗くなっていた。

体育館横の水飲場で、
弘幸が顔を洗っている。

その横では聡が、タオルで顔を拭いていた。


「おー、冷てぇ」 


弘幸は下を向いたまま、
手探りでタオルを探す。


「タオル、タオル…」


聡は、弘幸の手の近くに
タオルを置いてやる。


「ああ、あった、あった」 


弘幸はタオルを取り、顔を拭くと、
大きく息をして、


「フーー……。
 今日もコーチ、厳しかったよなぁ」


聡が、真面目な顔で弘幸を見て、


「ああ、お前のおかげでな」


「何言ってんだよ。
 そんなことないだろう。
 だって……。いや……」


「ハハハハハ。冗談だよっ」


うろたえる弘幸を見て、笑う聡。

弘幸は、聡を肘で小突きながら、


「このー」 



聡達から少し離れたところで、
女の子3人が輪になって話をしている。

その輪の中に綾がいる。

綾は、聡が見える位置に立っていた。



聡と弘幸は何か楽しそうに話しながら
部室へと、去って行った。