車は海を離れ、田舎道を走っている。
気を取り直して恵子に話しかける中村。
「ところで、ダンナはなにをしてるのん?」
恵子も笑顔で答える。
「何って、仕事のこと?」
「そう」
「商社マンなの」
「へえ、それじゃ大学を出て」
「そう。それで営業をやっているの」
「じゃあ、給料もええんや」
「それ程でもないわ」
「マンションかなにかに住んでんの?」
「いいえ、社宅なの。
狭いのよ。早く広い家に住みたいわ」
「でも、社宅やったら家賃は、
会社がいくらかもってくれてるんやろう?
あちらでの家賃はバカにならんから」
「そうね」
中村は笑顔で恵子のほうへ振り向き、
「子供は?」
この質問で、恵子の声が変った。
恵子は前を向いたまま、
「ひとり…。女の子なの。
亜季って言うの」

