私、海が見たい


中村は、神戸の日々に、思いを馳せた。

その沈黙を破るかのように、
恵子の声がした。

「何か、音楽、かけてくれない?」


「ああ、そやな。でも、古い、
 フォーク・ソングしか無いんやけど」


「それで、いいわ」


中村は、カー・ステレオに、
カセットを入れた。

付き合っていた頃、
流行っていた歌が、流れ出す。

「懐かしいわね。
 あの頃、よく聞いたわ」


「そやなぁ」


その口調には、
恵子は、付き合っていた頃のことは、
過去の事と思っているように、見えた。