私、海が見たい


恵子も立ち上がると、

「あっ、それからこれ、
 どこかに置いておいて」


恵子は椅子の横から植木鉢を取り出し、
中村に渡した。

「なんなん、これ」


「さくら草なの」


中村は、花には全く興味が無く、
知っているのは、桜とか、チューリップとか
代表的な花くらいだった。

「お店の前を通った時、
 ちょっと目に付いたから、買ったの」


「へえー、さくら草って、こんな花なんや」


「さあ、私もよく知らないんだけど、
 お店の人がそう言ってたわ。
 いい香りがするでしょう?」


「そやな。どこかに飾っとくわ。
 ありがとう」


中村は、鉢を受け取り、
さくら草の香りを嗅ぐ。

「じゃあ、行こか」


「うん」


伝票と植木鉢を持ってレジへ向かう中村。

その後ろから、コートを手に、
恵子もついて行った。