五感のうち、みっつがまだあの夜のことを記憶している。 香りと、声と―――影。 「それより、ハンカチ……渡さなくてよかったのかよ」 「お前ハンカチにこだわるよな」 渡したら、俺と彼女を繋ぐモノがなくなるだろ? そう言う俺に納得したように、 ……そっか、と…小さく呟いた。 「また、会える気がするんだ」 そう話すと。 「大した自信だな」 その時は また俺のカンが働くかもな。 そう言って志月は、手を銃の形にして頭にくっ付けた。