「…」
それきり会話はしなかった。
普通に授業を受けて、普通に家に帰ろうと思っていた。
だけど、帰り道に「SALE」なんてでかでかと書かれた旗を見てしまい、つい足をとめてしまった。
「…この服可愛いかも」
一着のワンピを手に取り、ボソリとつぶやく。
現在、学校帰りに通る百貨店に寄り道中だ。
旗に書かれた文字と、外の暑さにやられて迷わず来てしまった。
今は6月下旬。
天候が不安定で、妙に蒸し暑い。
だけど、結局今月は、もうお財布が軽くなっているから、ただ涼しみにきただけとなるのだけれど。
そうして今、2Fの洋服フロアでワンピ試着中である。
「…何気にイケてない?」
鏡の前でくるりとまわってみる。
これ着てどこへいこうか。
友達とショッピング。
彼氏とデート。
………て、彼氏いないか。
これ買ったって、着る機会ないんだし諦めるか。
ワンピを脱いで、さっさと帰ることにした。
カチ
近くにあったエレベーターのボタンを押した。
わざわざエレベーターを使うのもなんだが、とおくのエスカレーターを使うのも面倒なので、あたしはこの道を選んだ。
面倒くさがりやのあたしの悪いところだ。
だから、最近やけにお腹回りに肉がつく始めてしまったのだろうか。
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