「雨芽?」


咲貴君が優しく笑いかける。



今だけは…、その笑顔もあたしにしか向けられていないんだ。


そう考えると自然に嬉しくなった。



「なに、にやけてんだよ。」


椅子に座っている私の前にしゃがみこんで咲貴君があたしの顔を見る。



「なんでもないよっ!!」


あたしが笑うと咲貴君が優しい顔になる。



「…おいで、雨芽?」


そう言って、腕をひかれて咲貴君の腕の中におさまってしまった。



「…しょ、咲貴君…?」


いきなりで戸惑う、あたし。




すると、抱きしめる力がもっと強くなった。