意地悪王子とお姫様



もう、終わっちゃうんだ。


あたしにとっては、初めての彼氏。


あんなに幸せだったのに。

あんなに笑ってたはずなのに。


恋って、こんな悲しい思いもしなきゃならないんだね。



―――雨芽の笑顔が大好きなんだ


そう言ったのに。


今、要君のせいで涙を流してるんだよ。




「……雨芽っ…?」


廊下で立ちすくんでいたあたしに声をかける。



「………………。」



振り向くと啓が心配そうにあたしを見つめていた。



「…大丈夫かよ?」


そう言って、差し伸べられた手を素直に受け取ることができなかった。



「……啓のせいだよっ…」


あたしは、なぜか啓に当たっていた。