意地悪王子とお姫様



「……ど、どうしたの…」


いきなりのことで、どうすることもできなかった。



「…雨芽が泣くからだろ…?」


「だからって…」


ギュッと強く抱きしめる。


「……苦しいょ…」


あたしは、啓の袖を掴んだ。



知らなかった。

要君が見ていたなんて。



「……ごめん。帰るんだろ?」


そう言って、離れるとあたしの落ちた鞄を拾ってくれた。


「…うん」


涙を必死に拭く。


「ほら…」


そんなあたしに啓は、ハンカチを貸してくれた。


「…あ、ありがと…」


なんだか、啓が優しいと逆に空回りしてしまう。



「要君とちゃんと話し合ってみるね…」


「あぁ…」


啓は、悲しい顔をしていた。