――バンッ！
勢いよくドアを開けた。
愛しい人の姿があって、安心する。
立ち上がってあたしを見た。
「…はやっ」
咲貴君が笑う。
あたしは、泣きながら抱きついた。
いきなり抱きついても、咲貴君は優しく受け止めてくれる。
やっぱり、離れたくないよ。
ぎゅっとしがみつくあたしの頭をなでてくれる。
「俺は、どこにも行かねーよ？」
顔を上げて、咲貴君を見た。
「大丈夫だから…。泣くな…」
そう言われて、もっと涙が溢れてしまうあたしを見て困った顔をする。
啓から言われた言葉。
啓からされたキス。
嘘だと思いたかった。
