「違うよ、啓。あれはね…?」
ちゃんと説明しようとした。
けど、啓の顔が近づいてきて…
キスをされた。
「お前、無防備だし隙もありすぎんだよ」
おかしい、おかしい…。
「こんなのおかしいよっ…」
涙ぐむあたしを啓は、切なそうに見る。
「いつもの啓じゃないっ…」
「……俺だよ。いつも俺は、お前しか見てねーよ」
「……っ…」
信じられなかった。
後ずさりしてしまうあたしを啓は、抱きしめる。
「……雨芽」
「…はな…してっ…」
消えてしまいそうな声で、あたしが言う。
啓は、ゆっくり離れた。
逃げ出すことしかできない。
あたしは、また屋上に続く階段を上った。

