涙の理由──今となっては全然覚えていない。

ただ、当時の私は泣いていた。
小さな子供のように泣いていた。



「どーしたのっお嬢さん」



何だこの気持ち悪い響きは。
瞬時にそう感じた。

フッと顔を上げるとニコリと笑う少年がいる。
年が近そうだったのでますます嫌悪感を抱いた。



「……何人?」



変人は失礼かと思い、一生懸命考えた聞き方。

当時まだ小学生だったため、これが失礼というのも理解できてなかった。



「純ジャパニーズ!」



ビシィと親指をたて、明るく受け流す彼にときめいた。

面白い人だな、と思った。
そしてやはり変な人だな、とも思った。



「私も純ジャパニーズ」



だけど何だか楽しくて──



「マジィ!?ハーフっぽい」



嬉しくて───
この人が好きになった。

恋とかじゃなくて、人として。



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