あれだけ汗ばんでいた季節も、朝は肌寒くなってきた。




「うーっ、さむっ。」


――シャーッ!

カーテンを勢いよく開け、少し弱い陽射しに物足りなさを感じた。




「サボちゃん、おはよっ
 今朝はなんだか、寒いね〜」



そうちっちゃなサボテンに語りかけながら、太陽を浴びそうな位置に少しだけサボテンをずらした。




「ふわぁーあー」

大あくびをしながら、パジャマにカーディガンを羽織り、ゆっくりと階段を降りた。




あたしはキッチンでコーヒーの用意しながら、食パンが焼けるのとケトルにお湯が沸くのを待った。




椅子の上には、ママの赤いエプロンが、無造作に置かれていた。




きっとママは、すぐに戻って来る気だったに違いないと・・・


――ピー!


「はい、はい」


――コポコポコポッ・・・

コーヒーカップにゆっくりとお湯を注いだ。




食パンにバターを塗り、大好きなはちみつをたっぷりかけた。




「いっただきまーす」




一人の食事は慣れてた。




母子家庭にはありがちなことだ。




でも今までとは何かが違う。




なにもかも、一人でやらなきゃいけない。




どれだけ、ママに頼ってきてたかが身に染みてよくわかる。




大好きな食パンも、なんだかモサモサしてなかなか喉を通らなかった。




一緒に暮らす人が、いるのといないのでは、こんなにも違うものかと痛感した。