「おーい、紗茅!」



学校帰りに寄り道をして、駅前を歩いていると、突然雅人に呼び止められた。



「あ、雅人!」



いかにも不良グループって中にいた。



「じゃあなー!」

その人達にそう言って別れ、雅人はあたしの方に走ってやって来た。




「よぉっ!元気かよ!」



「うん、元気だよ」



「少し話しできるか?」



「あっうん、何?」



「んまぁ、さ店にでも入るか」




雅人は、あたしの返事を聞くまでもなく、さっさと歩きだした。




メールでもいいのになと思いながら、雅人の真剣な表情が気になって、後ろを追いかけた。




「いらっしゃいませ〜♪」
雅人は、わざと人気の少ない喫茶店を選んで入って行った。




最近のカフェとは違う、クラシックの曲がかかりコーヒーのいい香りが漂う、一昔前って感じの雰囲気のいい店だった。



あたし達はコーラとホットコーヒーを頼み、飲み物が運んで来られても、しばらく沈黙が続いた。




「でっ?何・・・?」

雅人が吸う煙草の煙りを見つめながら、あたしは聞いた。



「あぁ・・・うん・・・・・・」

雅人はまた煙草を吸い、ふぅーっと深く息を吐いた。


「もしかして・・・那抖のこと?」

あたしは今度は雅人の顔をじっと見据えて聞いた。



「あ、うん・・・」

また同じ返事した。




「あ、うん。
 じゃわかんないよ」



「あぁ、うん・・・
 いや、あのな・・・
 言っていいもんか悩んでな」

雅人は煙草の灰をとんとんと灰皿に落とした。



「言ってよ。
 その為に待ってたんでしょ?」



「あ、うん・・・」



「ちょっとぉっー!」



「あっごめっ、あのな・・・」




雅人は、ゆっくりと那抖のことを話し始めた。