「この近くに動物病院ってあったっけ?」


「あ……。確か5分くらいの所に小さな動物病院があったはず……。この道を真っすぐ行けば着くよ」


「分かった、ありがとう。俺、こいつのこと病院に連れていくから。引き止めて悪かった」


そう言って子猫の頭を撫でると杉崎君はすぐに歩き出した。



でも、すぐにピタリと立ち止まって苦笑いを浮かべながら振り返った。



「悪いんだけど、やっぱり明菜ちゃんも来て?」


「……それはいいけど……、どうして?」


「俺、今日手持ち少なくてさ。どっかのコンビニで金下ろさないと。さすがにこいつ連れて入れないだろ?」


「あ……だね。分かった。とにかくこの子を早く病院に連れていこ?」



立て替える分のお金をあたしが持っているはずもなくて。


あたしが頷くと、杉崎君は「よかった……」と心底安心したように呟いた。



この時、杉崎君と一緒にいるところを誰かに見られたらどうしようなんて考える余裕はなくて。



あたしは子猫を、一刻も早く病院に連れて行こうと必死になっていた。