「……りゅう……しん?」


聞き間違えるはずない。


あたしの名前を呼ぶその声は確かに龍心のものだった。


「あぁ。とりあえず出てこい」


「うん……」


杉崎君が近くにいることなど既に頭の中にはなくて。


ただ龍心が、何故この場所にいるのかしか考えられなかった。


どうして、とか。なんで、とか。


そんな言葉がグルグルと頭の中で繰り返される。


あたしは震える手で、トイレの扉を開けた。