「……っ……」


心拍数が急上昇し呼吸が荒くなる。


思わず漏れそうになる息を両手で必死に抑えて押し殺す。


そして、ついにあたし達のいる個室の扉が叩かれた。


≪コンコン……――≫



トイレの中に響き渡る、乾いた音。


すると、杉崎君は何を思ったのか扉を内側から叩いた。


「入ってます」


普段と変わらぬトーンでそう返す。


「……明菜、そこにいるんだろ?」


すると、扉の向こう側から聞き覚えのある声がした。


どうして……?


あたしを明菜と呼ぶ男の子は……龍心しかいない。


あたしは思わず体を硬直させて、目を左右に動かした。