その時、ふと前から歩いてくる男子生徒に気がついた。
遠めでもハッキリ分かるくらいの美貌を兼ね備えている男の子。
体中からキラキラとしたオーラを放ってる。
その男の子はあたしの目の前でピタリと立ち止まった。
「佐和さん、何かあった?顔色が悪いけど」
「ううん、大丈夫」
「もしかして、具合でも悪い?」
杉崎君はほんの少しだけ首を傾げて、あたしのおでこに手を伸ばす。
その瞬間、おでこにひんやりとした感覚が届いた。
「熱は……なさそうだね?」
「うん……。本当に大丈夫だから。心配してくれてありがとう」
杉崎君におでこを触られたなんて言ったら、クラスの女子……ううん、学校中の女子を敵に回すかも。
杉崎君は校内のアイドルだ。
『天然美少年』というあだ名で呼ばれている杉崎君。
同じクラスとはいえ、彼と関わったことは一度もない。
しゃべったことも、数回程度のはず。
だから、こうやって話しかけられたことに正直驚いていた。
「佐和さんが元気ないのって、珍しいね」
「……そう?」
「俺でよければ、佐和さんの力になるよ?」
「えっ?」
杉崎君はそう言うと、あたしの頬にそっと手を添えた。
ひんやりとした杉崎君の手の平に意識が集中する。
「佐和さんのこと、もっと知りたいな」
「杉崎……く……ん?」



