あれからあの電車に乗っても

黒の君を見掛けることはなかった。



あたしは終点の駅の構内にある本屋でバイトをしていた。



入口にドアはなくオープンになっていて

電車を待つ人、改札へ向かう人

また切符を買う人が

レジに居ればよく見えた。



発車までの時間潰しに立ち読みをして行く人も多い。


朝会えなくても、帰りにここから乗るんだから

いつか会えるだろうと思っていた。



しかし毎日バイトしているわけでもなく

シフトは彼氏のヒロと相談して決めている。


バイトのない日は、ヒロが校門の前まで

愛車RX-8で迎えに来るから、電車では帰らない。



本屋は閉店が9時だ。


そしたらあたしは

9時12分発の電車に乗って帰る。



その後の電車で黒の君が帰る可能性もあるわけで……



なかなかあたしは

黒の君に会えなかった。



一言、お礼が言いたかったんだ…