あたしは約30分遅刻をして学校に着くと

そぉーっと後ろのドアから教室に入り、席についた。


「大丈夫だった?落ち着いたの?」


絵里が振り向いた。


「うん…なんとか…
それがさ、ちょっと嬉しいことあったんだ〜」


あたしは思わずニヤニヤしてしまった。


「何なに?遅刻してきていいことって?」


睨みながら明日香がにじり寄る。



すると児童心理学の飯田先生が


「お〜い!そこ!

…なんだ、澤井来たのか?来た早々騒がしいぞ」


と言ったので、ひとまず中断した。



講義が終わってから、ジュースの販売機の横のベンチに座り

あたしは黒の君の話を夢中で喋った。





「ふ〜ん…好きになったの?」

絵里が尋ねる。


「そんなんじゃないよ!
なんかミステリアスで気になるんだ」


「へぇ〜どんな人か見てみたーい!」

明日香が目を輝かせた。


「だーめ!憧れの人だもん」


「憧れだけで終わるならいいけどね」


絵里は意味深に言う。


「絵里!このことは雅史クンには言わないで!
ヒロが聞いたら怒っちゃう!」


「わかったよ」

絵里は大丈夫、というように笑った。


あたしはホッと胸を撫で下ろした。