彼女は、 兄貴のところへ逝ったのかもしれない。 それでも、 オレは、 この町で。 兄貴が生きた、この町で。 冬月さんが過ごした、この町で。 生きていこうと思う。 彼女の帰りを待ちながら。 やわらかな午後。 冬の匂いがする。 薬指に残る命の温もり。 彼女の温度。 遠くで犬が鳴いた気がした。