「歌夜……、で、出ようか」
「う、うん。出ようか……」
どうやら二人は、この微妙な空気から逃げ出すために席を立つことにしたらしい。
しかし、紅志が伝票を持って椅子から腰を浮かせた時。
「あ!!」
突然、隣の席に座っていた高校生の一人、螢が大声をあげた。
「へっ?!」
って俺、驚いてどうすんだ?!
紅志はそっと声を出した彼の方を振り返った。
すると、その茶色く柔らかそうな髪を揺らして螢は立ちあがっていた。
「あ、あの!」
「は、はい」
も、もしかして私たちがずっと見てたの気付いてたのかな?!何か言われる?
ちょっと不安げに、紅志を見上げる歌夜は心配そうにその横顔を見つめていた。
しかーし。
「あのっ!あ、握手してください!!」
さっと差し出されたのは手のひら。
「え、あく、しゅ?」
なんで俺と握手?
紅志は一瞬わけがわからなかった。
自分が考えているよりも顔が知られていることにまだ気付いていない彼であった。



