ライブハウス“ORANGE DOTS”
あっという間に会場時間になり、たくさんのオーディエンスがハコの中、ぎゅうぎゅうにひしめき合っていた。
「うっわー、凄い人!!さっすがプリズナーだなぁ!!」
「それだけじゃないだろ、他にも有名なバンドが出るんだろ?」
「うん。全部俺の好きなバンドなんだよねー!!」
ニコニコ笑いながら話しているのは螢。
昼間に紅志と歌夜に会って、急に思い立って来てしまったらしい。
嫌がる颯人を引っ張って、ライブを観にやってきたのだ。
ったく……せっかく今日はクリスマスだってのに。二人で過ごす予定が台無し。
正直、颯人は拗ねていた。
「けーい、お前、このライブ終わったら俺の気が済むまで付き合え」
「えー?なに?うるさくてよく聞こえないよ」
「分かったって言えばいいんだよ」
「んー?よくわかんないけど、わかったー」
おいおい、螢。キミ、颯人にハメられてるよ。
子供みたいにはしゃぐ螢の手を、颯人はこっそりと握った。
「なっ?!颯人!!こんなとこで……」
「黙ってろって。こんなぎゅうぎゅうな中誰も気付かねぇよ」
微かに赤くなった頬のまま、螢はコクンと頷くと、そのままステージの方へ顔を向けた。恥ずかしくて颯人の顔が見られなかったのである。
……あー、熱い。