「な、そういえばハルタ遅くないか?」
アキトは先ほどベース担当のハルタが手洗いに行くと言ってステージを下りてから、かれこれ15分は経っていることに気付いた。
「ん?そういえば遅いねー、ハルちゃん迷子かな?」
「ナオヤじゃないし、迷子にはなんねぇだろ」
そう言いつつも少しばかり心配になった面倒見の良いアキト、立ち上がってハルタを探しに行くことにした。
「ナオヤ、ちょっと待ってろ、ハルタみてくるから」
「えぇ~っ!俺も行くっ!」
駄々っ子のように走り寄ってきたナオヤに、アキトは仕方なく頷いた。
「ま、リハはもう十分だし、な」
そう言いながら自分のスティックを手に、彼はスタッフたちにひとこと声を掛けた。
ステージを後にして、とりあえずトイレへ向かった二人。
ボソボソと聞こえる話し声に足を止めた。
「この……好きなんだよ……」
「顔に……ないですね……趣味が、悪い」