ハイジの言葉に珪甫は思わず、はぁー、とワザとらしく溜め息を吐き出した。


またかよ……。


「なに、歌夜のメアドとかナンバーが知りたいとかいう話?」


「え、何でわかったんだよ?!」


目を丸くするハイジに、珪甫は面倒くさそうに口を開く。


「毎回対バンの度にいろんなヤツから同じこと聞かれる」


どうやら歌夜ちゃん、モテモテ。困った子です。


「マージで?!そりゃ大変だなー、ライバルだらけじゃん」


苦笑いするその横顔に、珪甫は不思議に思って問い掛けた。


「でも、あんたあのギターの女と付き合ってんじゃないの?遊び?」


「んな?!ちっ、ちげーよ!!美恵とは本気で付き合ってるよ!俺は浮気は絶対しないの!!」


顔を真っ赤にして叫んだハイジの声は、楽屋いっぱいに響いて……。
むろん、同じ室内にいた美恵ちゃんにも聞こえてしまったわけで。
ハイジは頭を抱えて顔を隠した。
そんな彼を表情を変えずに見ながら珪甫は呟いた。


「……熱いな」


……お前さんは冷めすぎなんじゃ。