夕暮れがそろそろ迫る時間帯。彼はオレンジ色の車を走らせていた。
ハンドルを握る腕は長く、指先はしなやか。
その横顔は恐いくらいに整っていた。


芹沢嵐。失恋回収車を担当する魔法省の人間であります。


「残念だね、ラン」


「何が?」


人通りの多い道をゆっくりと走らせていると、隣に座っている天使の顔をした小悪魔──っと失礼、皆瀬亮が口を開いた。


「次、男みたいだね」


別に女の子を期待しているわけじゃないんだけど、と思いながらもランは無言で返した。


道を歩いてた二人組の青年達の横へ滑らかに車を停車させたランは、窓から顔を出した。


瞬間。


「「うわ……」」


間抜けな顔して見上げてくる二人が口をポカンと開けた。


もちろんこの二人はタキライであるが。


「ま、魔王?」


あん?


一瞬クエスチョンマークが脳裏をかすめたランだったが、ここは我慢。にこやかに口元をほころばせて口を開いた。


「俺に用があるのはどっち?」