さてさて、少し時間を遡って。ライとタキがあのオレンジ色の車に遭遇する2時間ほど前。


「なにしてんのー?こんなとこで寒くない?」


ライブハウスでのリハを終え、暇だった海斗は街をブラブラしていた。そこで見つけたのが。


「オマエかっわい~!毛、艶々だねぇ~」


……なにしとるんじゃ?と思った皆様。
海斗は路地裏でひなたぼっこしている一匹の猫に話し掛けていたのだ。


そのにゃんこ、知る人ぞ知る、伝説の猫“ぶっさん”(どうやら作者んちの飼い猫らしいよ)は、ふっくらした体型をドテッとアスファルトのど真ん中に横たえ、グラドル並みのポーズをとっていた。


海斗はそのぶっさんの横にしゃがみ込んで、話しかけていたのだ。


「いや~、俺にゃんこ好きなんだけどさぁ。ほら俺ってばバンドやってるっしょ、生音にびっくりしちゃうのかなぁ、猫にきらわれるんだよねー、俺の部屋」


そう言いながらゆっくりとぶっさんに手を伸ばし、茶色とこげ茶色の背中を触ろうとしたその瞬間。





『触んないでくんにゃ』