「あ」


クリスマス間近のイルミネーションがウルサいくらいに輝く雑踏の中、声をあげたのは螢だった。
真っ直ぐ前を見つめたままで突然足を止めた彼に、隣に並んでいた颯人は2歩先を行ってから振り返った。


「なに?」


不思議そうに振り返った彼の黒髪がサラリと冷たい風に揺れた。


「あれ、あれあれ!」


「……?」


赤くなった鼻先が可愛いなぁ、なんて余計なことを考えながら颯人は螢の指差す先を振り返る。


……と。


「え?誰?」


「えぇ?!颯人知らないのかよ!!あれPRISONERの紅志と歌夜だよ!」


「……誰?」


なおも首を傾げた颯人に、螢はガックリと肩を落とした。


「なんで知らないわけ?今、売れに売れてるインディーズバンドだぜ?!」


「音楽に興味はない」


バッサリである。あまりにバッサリすぎてむしろ清々しい。